無線呼び出しシステム、無線通信機、画像通信機、通信用計測器などの販売から工事、運用、保守は日本テクニカル・サービス ISO

NTS 日本テクニカル・サービス株式会社 SDGs SDGs

通信用計測器

伝送特性とは

アナログ回路やアナログ回線のパラメータを総称して伝送特性と言います。すなわち、入力に対する出力の関係を表します。

パラメータとしては利得、損失、雑音、群遅延歪等があります。

大井電気では、特にフィールドメンテナンスを意識した利得、損失、雑音試験用の各種測定器を製作しております。

 

平衡・不平衡

通信回線には電話回線のように2本のペア線を用いた平衡型(BALANCE)と同軸ケーブルのような片線がアース(SG:シグナルグラウンド)になっている不平衡型(UNBALANCE)とがあり使用する周波数等の条件により使い分けられています。

 

(1) 平衡型

 

 

信号は2本の線を通して伝送されるため外部からの誘導による雑音の影響を受けにくい。
線間の浮遊容量等の影響により周波数が高くなるほど減衰量が大きくなり、高周波伝送には適さない。

 

(2) 不平衡型

 

 

 

 

信号は1本の独立した線と、共通の帰還線(SG:シグナルグラウンド)により伝送される。このため外部からの誘導による雑音の影響を受けやすい。一般的には線材の外側をシールドしたケーブルを使用することが多い。遠距離用ケーブルの代表的なものに同軸ケーブルがあり、同軸ケーブルの場合は浮遊容量等の対策がなされているため高周波特性が良く、またシールド処理により外部雑音の影響も比較的受けにくい。

 

デシベル

通信機器間の信号は電気エネルギーにより伝達されます。このエネルギーをレベルといい、デシベルで表します。デシベルはある電気エネルギー P₀P₁の比を常用対数で計算し、単位は “dB” で表します。

L(dB) = 10log(P₁/P₀)


電力Pは電圧Vと電流Iの積で求められ、通信路は特定のインピーダンスZを持つ伝送路により構成されています。そこで、電圧Vは電流Iと抵抗Rの積で求められますので抵抗R(インピーダンスZ)が一定な伝送路では、電力Pと電圧V、電流Iは比例関係にあることがわかります。

P = V・I
V = I・R
I = V/R
P = I²・R = V²/R

L(dB) = 10log(P₁/P₀) = 10log((I₁²・Z₁)/(I₀²・Z₀)) = 10log((V₁²・Z₁)/(V₀²・Z₀))
 ここで、Z₁ = Z₀ であるため
L(dB) = 10log(I₁²/I₀²) = 20log(I₁/I₀) = 10log(V₁²/V₀²) = 20log(V₁/V₀)

いま、V₀ = 1mV、V₁ = 10mV とすると
L(dB) = 20log(V₁/V₀) = 20log(10/1) = 20×1 = +20dB

となります。逆に V₀ = 10mV、V₁ = 1mVとすると
L(dB) = 20log(V₁/V₀) = 20log(1/10) = 20×(-1) = -20dB
となり、正負の極性が逆になることがわかります。

 

相対レベルと絶対レベル

このように、ある電力P₀P₁や電圧V₀V₁との比較を相対レベルといい “dB” で表します。
これに対して、エネルギーそのものを表すときには1mWを基準エネルギーとしてP₀に代入し、計算し
ます。この絶対レベルの単位は “dBm” となります。


P₀ = 1mW = 0dBm
L(dBm) = 10log(P₁/P₀) = 10log(P/1)
P₁ =  100mW のとき = 10log(100/1) = +20dBm
P₁ =    10mW のとき = 10log(10/1)   = +10dBm
P₁ =      1mW のとき = 10log(1/1)     =     0dBm
P₁ =   0.1mW のとき = 10log(0.1/1)   = -10dBm
P₁ = 0.01mW のとき = 10log(0.01/1) = -20dBm

インピーダンスが600Ω75Ωの回線では0dBmの基準電圧は


formula01

となります。

 

600Ωの回線に電圧が基準電圧の半分の387.5mVあったとすると、そのレベルは
L(dBm) = 20log(387.5/775) = 20log(0.5) = 20×(-0.3) = -6dBm

 

1/3       の    258mV では、L(dBm) = 20log(258/775)    = 20log(0.33)   = 20×(-0.5) = -10dBm
1/10     の   77.5mV では、L(dBm) = 20log(77.5/775)   = 20log(0.1)     = 20×(-1)    = -20dBm
1/30     の   25.8mV では、L(dBm) = 20log(25.8/775)   = 20log(0.033) = 20×(-1.5)  = -30dBm
1/100   の   7.75mV では、L(dBm) = 20log(7.75/775)   = 20log(0.01)   = 20×(-2)     = -40dBm
1/300   の   2.58mV では、L(dBm) = 20log(2.58/775)   = 20log(0.003) = 20×(-2.5)  = -50dBm
1/10000.775mV では、L(dBm) = 20log(0.775/775) = 20log(0.001)  = 20×(-3)    = -60dBm


となります。

 

代表的な測定器

(1) レベル計 (レベルメータ:LM) 大井電気 LM-332、LM-331、LM-78、LM-534B、MS-302、SPM-40、SPM-101
(2) 発振器 (オシレータ:OSC) 大井電気 LM-332、LM-331、MS-302、SPM-101
(3) 可変抵抗減衰器 (アッテネータ:ATT) 大井電気 AT-50、MS-302
(4) マッチングトランス NTS オーダーメイドマッチングトランス
(5) 濾波器 (フィルタ:LPF/HPF/BPF/BEF) 大井電気 LM-332:BPF/BEF/LPF搭載、MS-302:BPF/LPF搭載、LM-534B/SPM-40/SPM-101:BPF搭載
(6) 等価器 (イコライザ:EQL) 大井電気 LM-332/MS-302:ITU-T O.41(P.53)勧告準拠の評価雑音等価器搭載

レベル計 (レベルメータ:LM)

 一般的にレベル計は600Ω系、150Ω系、75Ω系、50Ω系等があります。600Ω系は主に音声周波数帯域で使用され、150Ω系、75Ω系は搬送装置間、75Ω系/50Ω系は同軸ケーブル区間で使用されています。測定対象のインピーダンスを確認して使用する測定器を決めてください。また、測定器により測定周波数の範囲が異なります。さらに通信回線には電話回線のように2本のペア線を用いた平衡型(BALANCE)と、同軸ケーブルのような方線がアース(SG)になっている不平衡型(UNBALANCE)とがあります。不平衡型の回線レベルを平衡型のレベル計で測定することはできますが、逆の平衡型回線レベルを不平衡型レベル計で測定しようとすると電源からの誘導などの不具合が発生することがあり、特に注意が必要です。


 また、レベル計にはインピーダンス”HIGH”、”LOW”の切り換えスイッチがあり、次のように使い分けます。

 

◉ (a) 運用中の回線レベルの測定のとき

運用中(オンライン)の回線レベルを測定するときはレベル計の入力インピーダンスを “HIGH” にして回線に接続します。

 

LM_HIGH

 

※インピーダンス:HIGH

オンラインのレベルを測定するときにはインピーダンスを必ずHIGHにしてください。
一般的に600Ω系では10KΩ以上、75Ω系では1kΩ以上となっており、回線インピーダンスにあまり影響を与えないように設計されています。誤って600Ω(または75Ω)に設定して接続すると、回線インピーダンスが低下しレベル低下の原因となります。

 

◉ (b) 回線を切り離して出力レベルを測定するとき

回線を切り離して(オフライン)出力レベルを測定するときは、レベル計の入力インピーダンスを装置のインピーダンスに合わせて測定します。

 

LM_LOW

Zout=Zin(端末の出力インピーダンスが600Ωのときはレベル計も600Ωとする)

 

レベル計には入力インピーダンス別に分類すると “600Ω系”、“150Ω系”、“75Ω系”、“50Ω系” に分けられます。また、測定周波数帯域で分類すると、“低周波用” と “高周波用” に分けることもあります。
さらに、用途別に分類すると、“フラットレベル計”、“選択レベル計”、“ノイズ測定器” に分類することもあります。また、測定回路や表示方法によりアナログ式とデジタル式があります。


① フラットレベル計:測定周波数に関して特に規制を行わないレベル計
② 選択レベル計      :目的、用途に合わせた周波数帯域のレベルだけを測定するレベル計
③ ノイズ測定器      :PSOPHOMETER(ソフォメータ)、評価雑音測定器とも呼ばれ評価雑音等価器を内蔵したレベル計

 

発振器 (オシレータ:OSC)

オフラインでの評価試験の時に使用するテスト信号発生器です。レベル計と同様にインピーダンスの指定が必要です。

 

可変抵抗減衰器 (アッテネータ:ATT)

可変抵抗減衰器はアッテネータとも呼ばれ、入力された信号をスイッチ等で設定された分だけ減衰して 出力します。設定は “dB” で表現されています。従って回線や端末のインピーダンスとアッテネータの インピーダンスと平衡/不平衡の条件は一致していなければなりません。
一般的には発振器の出力レベルの設定用に内蔵されているほか、可変抵抗減衰器として製品化されています。

 

マッチングトランス

マッチングトランスは、回線試験を異なるインピーダンスを持つ試験器で試験をしなければならないとき等に使用します。また、平衡型回線を不平衡回線の測定器で試験するときにも使用できます。

 

濾波器 (フィルタ:LPF/HPF/BPF/BEF)

① LPF (ローパスフィルタ)                       :設定された周波数よりも低い周波数だけを通過させるフィルタ。
② HPF (ハイパスフィルタ)                      :設定された周波数よりも高い周波数だけを通過させるフィルタ。
③ BPF (バンドパスフィルタ)                   :高低2つの周波数を設定し設定された周波数帯域だけを通過させるフィルタ。

④ BEF (バンドエリミネーションフィルタ) :設定された周波数帯域だけを減衰させるフィルタ。BPFと逆の動作。

 

等価器 (イコライザ:EQL)

等価器は回線や搬送端局装置等により、通信信号周波数ごとに発生する位相歪の補正や信号レベルの減衰量の補正のために使用されます。

"LM-332 多機能レベル測定器"、"MS-302 伝送特性用測定器"には

ITU-T勧告O.41(P.53) "PSOPHOMETER FOR USE ON TELEPHONE-TYPE CIRCUITS" (電話回線用ノイズ測定器)

に準拠した評価雑音測定用の等価器が搭載されております。

 

PSOPHOMETER:ソホメータ、ソフォメータと読みます。

※ITU-T:International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector (国際通信連合 電気通信標準化部門)

O41O41_a